本棚の10冊で自分を表現するとこうなった

yamayoshi.hatenablog.com

1年近く前にも「本棚晒し祭り」が一部界隈で盛り上がっておりましたが、やはり「秋」という季節は本を読むだけでなく、共有したくなる季節なのかしら。――それならば、乗るしかないでしょう、このビッグウェーブに。

ということで乗ってみました。(乗り遅れた感もありますが)

写真に撮って並べたかったけど、実家にある本が何冊かあって断念しました。

すでにブログで紹介してる本もありますが内容の被りはお許し下さい。

自分を表現ということなので、たいした話でもないですが自分語りも添えてます。

順番には工夫がありませんが上の2冊はこの企画を知って最初に選んだ本です。

高瀬舟

山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7)

山椒大夫・高瀬舟 他四編 (岩波文庫 緑 5-7)

 

最初に読んだのはおそらく中学生の頃で授業で習いました。

この話のテーマは知足と安楽死で、知足とは分相応ということです。

森鴎外 高瀬舟

庄兵衛はただ漠然ばくぜんと、人の一生というような事を思ってみた。人は身に病があると、この病がなかったらと思う。その日その日の食がないと、食ってゆかれたらと思う。万一の時に備えるたくわえがないと、少しでもたくわえがあったらと思う。たくわえがあっても、またそのたくわえがもっと多かったらと思う。かくのごとくに先から先へと考えてみれば、人はどこまで行って踏み止まることができるものやらわからない。それを今目の前で踏み止まって見せてくれるのがこの喜助だと、庄兵衛は気がついた。

わたしにとってこの部分が「高瀬舟」のすべてです。

この作品を読むまで欲について、まったくの無知で、他人がなぜ文句ばかり言うのかわかりませんでした。

人の欲には限りがないこと、そして物事は捉え方であるということを教えられました。

月と六ペンス

月と六ペンス (1966年) (旺文社文庫)

月と六ペンス (1966年) (旺文社文庫)

 

「月と六ペンス」の翻訳は行方昭夫さんが有名ですが、わたしが読んだのは龍口直太郎さんの訳でした。

この旺文社文庫版は、小説383ページのあとに著者モームについて40ページほど解説があり、あとがきで龍口直太郎さんがこう語っています。

モームの偉さは、天才と凡人、善人と悪人、美女と醜女を公平に描きあげるところにある。そしてさらに、こういった対照的な、ときには相反する要素が一人の人間の中にも並存することを見ぬいた点にあると思う。

この作品のストーリーは簡単で、家を出て行った夫に会って来てほしいと夫人に頼まれた「私」が主人公ストリックランドに会いに行くところから始まります。

おんぼろのホテルに一人で泊まっていた彼になぜ家出をしたのか訊ねると絵が描きたいからだと言います。

「自分に才能があるかどうか、どうしておわかりになりますか?」

「描かずにはおれんからだ。」

「だから、描かずにいられないんだっていっとるじゃないか。」

ストリックランドと周りの人々に起こる出来事は悲劇的なのに小説は喜劇みたいに描かれています。

そこを楽しめる人にとって、こんなに面白い作品は他にないと思います。

広告批評 特集 佐藤雅彦研究室 

広告批評 273号(2003年7・8月号)

広告批評 273号(2003年7・8月号)

 

佐藤さんとの対談は約20ページで当時、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)で行われていたゼミや講義の内容、佐藤雅彦研究室について語っています。

佐藤 そうですね。僕が評価するのは、本質的なものだけですから。だからよく「ほんとに面白いことって何か」と言うんです。ほんとにラディカル、根源的なものを求めなきゃダメだって。

この言葉に到達するまでの内容もそうですが、「ほんとうに面白いことって何か」という言葉、そして根源的なものを求めるという考え方がすごく心に刺さりました。

経済ってそういうことだったのか会議

経済ってそういうことだったのか会議 (日経ビジネス人文庫)
 

こちらも佐藤雅彦さんの本です。

たまたま古本屋で見つけて佐藤さんの名前に惹かれて購入しました。

読んでみた感想は、わたし今までなにも知らずに生きてきたなという反省でした。

少し古いですが、社会のしくみを知るにはとてもいい本です。

ホリエモンさんも自身の本の中で紹介してるみたいですね。

化物語(上)

化物語(上) (講談社BOX)

化物語(上) (講談社BOX)

 

アニメでは視聴済みでしたが、ちょうど入院することになって暇つぶしにに単行本を購入しました。

読んでみたら、アニメより笑えて、とくにするがモンキーは爆笑しすぎて手術後の傷に響きましたw

ほとんどが会話文ですがテンポがよくて言葉選びとツッコミが秀逸です。

アニメの不雰囲気も好きですが、面白さは断然こちらに軍配が上がります。

陰翳礼讃

陰翳礼讃 (中公文庫)

陰翳礼讃 (中公文庫)

 

痴人の愛」や「鍵」などの小説で知られる谷崎潤一郎氏のエッセ-です。

「陰翳」に絡んだものの見え方、感じ方について、家屋や厠、紙や器といった身近なものを例にとり、独自のユニークな意見を述べられたこの作品。

昭和八年に始まった連載で、当時、日本に西洋のものが伝わり急速に西洋化したことに対し、「もはや…もう一度逆戻りしてやり直す訳にいかないことは分かりきってる…だから…愚痴をこぼすに過ぎないのであるが…」という箇所があり、現代の日本を知る私は切なく、大きな喪失感を感じました。

世の中はどんどん便利になっていくけどもその度、何かを失っているのだと気付かされます。

この本を読んでると日本的な美というものが実感として確かにあって、谷崎氏の言う事にこんなにも共感できる自分は紛れもなく日本人だと思いました。

どこかに忘れていた感覚を思い起こさせてくれる一冊です。

スプートニクの恋人

スプートニクの恋人

スプートニクの恋人

 

高校生のわたしはある暇な日曜日、とつぜん外で似顔絵を描こうと思いつきます。

フランス映画にハマっていたのでなんか路上でやりたかったのでしょう。

その時のお共に持って行ったのがこの小説でした。

家の傍はわりと観光地なので、ただのペンと色鉛筆で素人が描く似顔絵屋はウソみたいに大盛況でした。

スプートニクの恋人」を読むふりをしながらお客さんを待つ図は今思い出してもシュールです。

22歳の春にすみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原をまっすぐ突き進む竜巻のような激しい恋だった。それは行く手のかたちあるものを残らずなぎ倒し、片端から空に巻き上げ、理不尽に引きちぎり、完膚なきまでに叩きつぶした。そして勢いをひとつまみもゆるめることなく大洋を吹きわたり、アンコールワットを無慈悲に崩し、インドの森を気の毒な一群の虎ごと熱で焼きつくし、ペルシャの砂漠の砂嵐となってどこかのエキゾチックな城塞都市をまるごとひとつ砂に埋もれさせてしまった。みごとに記念碑的な恋だった。恋に落ちた相手はすみれより17歳年上で、結婚していた。更につけ加えるなら、女性だった。それがすべてのものごとが始まった場所であり、(ほとんど)すべてのものごとが終わった場所だった。

ぢるぢる旅行記 (インド編)

ぢるぢる旅行記 (インド編) (Bunkasha comics―Manga Aloha! series)

ぢるぢる旅行記 (インド編) (Bunkasha comics―Manga Aloha! series)

 

旅行とか旅行記とかあまり興味がないわたしが面白かったマンガです。

これを読んでから、最悪インドに行けばいいと思うようになりました。

これは最悪死ねばいいと同じ使い方です。

インドパワーを信じるインド信仰のはじまりです。

ちなみにまだ一回も行ったことはありません。

エレGY

エレGY (講談社BOX)

エレGY (講談社BOX)

 

「この日記を見た女の子は
今すぐに、自分のいやらしいパンツ姿の写真を携帯で撮って、
メールでボクに送って下さい!
直ちに! 早く!」

自分のブログにそう書いた。これが僕の今日の日記だ。

こう始まるこの小説は、作者自身が7、8割が実話であると言っていて、確かに当時そんな記述を見たかもしれません。

わたしのPCがMacだった頃、「アンディーメンテ」のサイトの中にあるゲーム作家のジスカルドさんのブログの読者でした。

その時の話が講談社より新人賞に選ばれ、ジスカルドさんは小説家になっていました。

この世界なんでも起こるんだなと思った出来事で、初めて読む小説なのに主人公を知っているのは不思議な感覚でした。

読む前に、もし面白くなかったらなんか嫌だなんて考えていましたが、この小説は新人賞をとるだけあって面白い青春物語なのでした。

 

21世紀こども百科

21世紀こども百科 (World watch)

21世紀こども百科 (World watch)

 

これこそわたしに多大な影響をあたえた本です。

すっかり忘れてましたが記事を書いていて思い出しました。

未来に向けたオールカラーのこども向け百科事典です。

食べ物、動物、植物、乗り物、ロボット、ゲーム、マンガなど何でも載っていました。

前にこのブログを書いていてふと思ったことがあります。

なんでわたしは、いろいろなものを並べたくなるのかなって。

たぶん、無意識に百科事典をイメージしていたんですね。

自分を表現するとは

少なからず影響を受けた本、思い出がある本を選びました。

こんな企画じゃないと紹介することがない本もあるので面白かったです。

サムネの写真が撮れなかったのは残念ですが、また実家に取りに帰ろうと思います。

久しぶりに「21世紀こども百科」を読んでみたくなりました。